謎の痛みで身体がやばい(3)
旅行から帰った翌朝。朝から晩まで、ずっとだるい。足元がふらついて、何もないところで転びそうになる。
同様の症状が何日か続き、最終的には寝たきりに近い状態に陥っていた。当然、授業の準備も進まない。
旅行の疲れか、はたまた手足の件と関連するのか。でも、帰ってきたら東京も暖かくなってて、こわばりはしなくなったしなあ……。
そんなことを思いつつ、予約していた膠原病科へ、ほとんど這うようにして赴いた。
腫れは多少収まったんですが、全身がだるくて仕事にならないんです。何か原因に心当たりはありませんか。
そう懇願する僕に、女医は告げた。
レントゲンも特に問題ありませんし、ここではどうにもなりませんね。他に調べるところがあるとしたら脳神経外科ぐらいですね。もっとも、今日はちょうど終わってしまったところなので、明日以降に改めてお越しいただく必要がありますが。
その顔には苦笑の色が混じっていた。やれやれ、よくいるんだよな、こうやって思い込みであれこれ注文つけてくるやつ。私が何人診なきゃいけないと思ってるんだよ。まったく、めんどくさいなあ----被害妄想めいた物言いかもしれないが、その顔はそんなことを言っているようにも思えた。
結局、翌日(これまた這うように)受診した脳神経外科でも、異常は見つからなかった。
この病院にはもう世話になるまい、と心に決めた。
思うところあって、ずっと飲み続けていた花粉症の薬をやめてみたら、体調は少しだけ良くなった。
とりあえず、片道3時間(ただしほぼ座ったまま)の通勤で3コマの授業をして帰っても、翌日寝たきりなんてことにはならずにすむようになった。
ただ、身体はほぼ常にだるい。長期休暇で出勤がなかろうとお構いなしにだるい。手足(特に手)の指は、何をしても痛む。膝の痛みは目に見えて悪化した後、一進一退を繰り返している。
これらが複合的に作用して、休日に遠出したりレジャーを楽しんだりする意欲が、すっかり萎えて久しい。
僕はどうすればいいんだろうか。何をどうしたら、この悪循環から抜け出せるんだろうか。ここ1年半ばかり、ずっとそんなことを思い悩んでいる。
恐らく、先述の大学病院が決定的にダメなところだというわけではないと思う。徹底的に作り込まれたマニュアルから逸脱しない範囲に限れば、きちんと診てくれたという見方もできる。そもそも父はそこにかかったからこそ、70近い今でも健康に過ごせているという事実もある。
ただ、少しずつ寒さが訪れつつある今日この頃、再びむず痒さを覚え始めた手足の指は、これからどうなるのだろう……(昨冬は妻の妊娠→出産の関係で、陽当たりのいいアパートに引っ越したのと、エアコンが常時オンだったこともあって、目立った悪化はなかった)。いざまたあんな症状やこんな症状が出てきたとき、僕は何にすがればいいのだろう。
そう思って、少なからず暗澹とした気持ちになっている。